写真

言葉

『WHY NOT YOU? なんで、あなた(自分)じゃダメなの?』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

2018.2.13
From マックス桐島

映画製作の現場はサバイバル

 ハリソン・フォードの名言に、「人生に役立つ教訓の殆どを映画界で学んだ」というのがあります。その言葉どおり、映画製作には、挑戦、挫折、壁が付き物。
 例えば、Development Period(企画開発期間)は、業界用語でDevelopment Hell(開発地獄)と揶揄されるように、淘汰されるプロジェクトの残骸に満ち溢れています。数度と無く脚本を磨き上げ、希望のキャスト陣や監督と交渉、緻密な製作予算と製作スケジュールを作成し、投資スキームや配給青写真を設定したパッケージ(いわばビジネスプラン)が完成したところで、生き延びた企画がようやく陽の目を見る日が到来します。

 その後、スタジオや投資グループ、配給会社とのディールを契約した時点で「Go!」サインが点灯、やっとスタートラインに立った興奮が訪れます。そこから開始されるのが、家の新築工事に例えるなら基礎工事にあたるPre-Production Period(製作準備期間)。100人を超すスタッフの人選に端を発するチーム作り、ロケハン、撮影所や編集所との交渉、製作事務所の開設といった基礎的な実務タスクを適材適所で判断しながら決定し、通常50~70人となる台詞を持った俳優のキャスティングも並行して進められる、まさにサバイバル合宿のような職場です。

珠玉の宝物

3写真

 Principal Photography Period(撮影期間)は、いわば足場を組んで壁や屋根を構築する作業。ところが家の建設作業とちがい、セットやロケ地という背景を舞台に、エゴやプライド、主張と妥協が巧みにぶつかり合うカオス戦場と化す修羅場でもあるのです。
 数ヶ月間の撮影を終了し、いよいよPost Production Period(編集期間)に突入。撮った場面を物語にしてゆく作業は、床や壁紙、ドアや窓を完装し、好みの家具を搬入するときのワクワク感に満ちた空間です。
 しかし、ここでも、個々の場面に芸術的な思い入れを抱く監督と、配給会社や観客の好みを商業的に反映させなければならないプロデューサーが、本気で磨り合わせるガチンコ勝負が待っています。

 このような紆余曲折を経て映画は世に出されるわけなので、完成試写会の達成感、使命感は何ものにも代えがたいほどの至福の空間です。一年の大半を共に過ごした“戦友”との葛藤や問題処理を通して得た精神的な報酬は、ハリソン・フォードが指摘するとおり珠玉の宝物。

発想を転換できた言葉

 相手を判ろうとする配慮、同じ目的に向かって一路邁進する楽しさ、壁を乗り越える気力、1+1=3を生むシナジー効果などなど、人生のあらゆる分野で生きてくる英知を体験できるのが映画業界なのです。ましてや、俳優業はオーディションという究極の就活を日々経験する、好きでなければできない職業。

 挫折と希望の繰り返し、そして、ピンチの陰に隠れたチャンスなど、どこか人生模様とも重なります。
 俳優業がうまくいかず、夢破れて大工で生計を立てながら「やっぱり僕じゃダメなのか」と凹んでいたハリソンに、家建てを依頼した有名な業界人がこう言いました。

「Why not you?」

 その日から、ハリソンは、「なんで、あなた(自分)じゃダメなんだ?」と自らに問いかけながら、新たな発想で夢を追いかけ続けたそうです。
 自信喪失、弱気になった際、想い出して勇気を奮い起して欲しい一言です。

 

 

 

 

マックス桐島

人物紹介写真

ハリウッド映画プロデューサー
神奈川県出身。
ハリウッドで1990年以来、『Night of the Warrior (邦題「ナイト・ウォリアー」)』『Ulterior Motives (邦題「隠された動機」)』『Samurai Cowboy (邦題「ワイルド・ハート/遙かなる荒野へ」)』など13作品をプロデュース。また手掛けた作品は2001年度アカプルコ国際映画祭最優秀作品賞。2002年度ニューヨーク・インディペンデント映画ビデオ映画祭最優秀スリラー作品賞、主演男優賞などを受賞。著書に『NYビジネスマンはみんな日本人のマネをしている』(講談社プラスアルファ新書)など多数。
http://www.amazon.co.jp/-/e/B004LRJOSM

関連する記事

タイトル写真
心こそデトックスを!
記事を読む
タイトル写真
アイデアのつかみ方
記事を読む
タイトル写真
「ネガティブワード」の恐怖
記事を読む